日本陸軍便覧

米国陸軍省 編、光人社刊。

米国陸軍省が太平洋戦争に先立って情報収集し、マニュアルとして軍幹部に配布したものらしい。日本帝国陸軍の組織、教育、装備、戦術などあらゆる情報を網羅し分かりやすく整理されている。評価も長所短所とも冷静に記述されている。

大変に面白く読んだ。といっても肝心の戦術についてはボリュームがありすぎてサラッとみただけ。この本を借りたときは、歩兵各自の装備品が知りたかっただけなので。また読みたい。夜襲の多用について何かあるかも。
戦争に際し、このように徹底的な相手理解を追及する国に、相手をあなどって勝てる気で向かう日本が勝てるわけないと痛感する。

以下、わずかながら抜粋。

第7章 日本陸軍の戦術
他国民であればその任務には不十分と考える兵力で、日本軍が進んで敵陣地を攻撃することは、彼らのいわゆる軍事的優勢という自信に基づいている。この自信の説明には日本人の心理状態、国民特有の虚栄心、および過去の軍事的成功の分析を必要とするが、この研究のおよぶところではない。
日本軍の将校にとって「面目」および「不屈」に対する考慮は非常に大切であり、それゆえ彼らは「机上の」誇張した拡張に耽りがちになる。彼らは装備が不十分な軍隊に対しては放胆であることを証明したが、一流の優れた装備を保有する軍隊に対しては、より慎重な戦法を選ぶのが当然のことと思われる。
過去6年間の実践が示した多くの機会があったにもかかわらず、日本軍は常識的な戦術および戦技の一定の基本原則に違反し続けてきた。このような違反を改めない彼らの性癖は、主として敵に対する不適切な判断、および敵も保有する同等な軍事能力を信じないことが基礎になっている。最近の経験が日本軍の役に立ったか否かは、まだ不明である。

c. 短評 攻撃の携帯および実際の応用について、日本軍の原則の研究から得た印象は、次の通りである。
(1) 多くの場合、日本軍は伝統的な見方であればより消極的な行動が要求されるときにも攻撃しようとする。攻撃は軽率で大損害をもたらすかもしれないが、精神力および決断には決して欠けることがない。
(2) しばしば正面攻撃が、不適切な支援兵種の下で行われることは、珍しいことではない。
・・・
砲兵は、その能力を超える任務を割り当てられているようである。

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